現在妊娠中の皆様 FAQ
To current pregnant women





参考文献につきましては、「より詳しく知りたい人はこちら」のコーナ
ーに掲げてありますので、ご参照ください。


Q1.そもそも交通事故の際のシートベルトのはたらきとは、どんなも
    のですか?


  A.交通事故の際のシートベルトのはたらきは、次の 三つとされて
    います。

    1.乗員がハンドルやダッシュボードなどの車の固い部分にぶつか
     るのを防ぐ

    2.乗員が車の外に放り出されるのを防ぐ

    3.事故の衝撃をベルト全体に広く分散させて、体の一部分に強い
     衝撃が集中するのを防ぐ。  
      
   ☆妊婦の交通事故の主要な死因は、普通の人の交通事故と同じ
     く、頭部の強い打撲(車の外に放り出されたり、車内でダッシュ
     ボード等に衝突したり)によると言われています。 
                        (参考文献10)
               
 
Q2.シートベルトを装着したら、交通事故の影響はどのくらい違いま
   すか?


  A.いくつかの医学論文をご紹介しましょう。

    1.米国ワシントン州の妊娠20週以上の妊婦のうち、1243人の
     シートベルト装着者と、1349人の非装着者を比較したところ、
     非装着者は、胎児の死亡率で4.1倍、2500g以下の低出生体重
     児が1.9倍、そして事故から48時間以内の未熟児出生が2.3倍
     多かった。 (参考文献4)

    2.米国カリフォルニア州の妊婦の交通事故208人の調査では、
     シートベルト装着者の母体死亡率3.6%に対し、シートベルト
     非装着者の母体死亡率は7.8%だった。
     乗員の車外放出事故はシートベルト非装着者のみに起こり、
     この場合の母体死亡率は33%、胎児死亡率は47%であった。
                      (参考文献3)

    3.米国ニューメキシコ州の交通事故死33人を調査したところ、
      シートベルト非装着者が77%を占めていた。 (参考文献6)

    4.米国ミシガン州・オハイオ州の妊婦の交通事故43人に於いて、
     赤ちゃんが無事だった割合を調査したところ、3点固定式シート
     ベルト装着者が73%だったのに対し、非装着者は38%だった。
                      (参考文献13)


Q3.欧米先進国の法制度はどうなっていますか?

   A.村尾医師がOECD加盟30カ国の在日大使館に問い合わせた
     結果は以下の通りでした。

     
(1).妊婦も無条件にシートベルト装着: 21カ国

         ドイツ、フランス、オランダ、ルクセンブルグ、
         デンマーク、ノルウェー、フィンランド、
         アイスランド、スウェーデン、アイルランド、スイス
         チェコ、ハンガリー、ポルトガル、トルコ、カナダ、
         アメリカ合衆国、メキシコ、ニュージーランド、韓国、日本

     
(2).原則としてシートベルト装着だが、医師の診断書があれば免除: 4カ国

         イギリス、ベルギー、スロバキア、オーストラリア、

     
(3).妊婦は一律に免除: 5カ国

         イタリア、スペイン、ギリシャ、ポーランド、オーストリア


     ※注1.韓国、チェコ、メキシコ、トルコは、後部座席は一律に装着免除。

     ※注2.文書による一時回答23カ国、二次回答1カ国。残りは自己調査
                                            (参考文献27)

Q4.シートベルト装着法と生存者数の関係はどうなりますか?

   A.激しい衝突事故のケースを単純化すると下表のようになる
      かと思います。
     

妊婦独自
の装着法
 子宮破裂      母親     胎児  生存者数
 ベルト無し  無し     死亡   死亡     0名
 ベルト装着         無し    有り   生存  死亡       1名
 ベルト装着   有り   無し   生存  生存    2名


       先進国の大半では、表の「C」欄の制度を採用しています。
   


Q5.シートベルトを装着すると子宮が押さえられて苦しいのですが。


   A.それはシートベルトが妊娠子宮の膨らみを横切っているせいと
     思われます。
     すなわち妊婦独自のシートベルト装着方法を、正しく行って
     いないのではないでしょうか。

     正しい妊婦独自のシートベルト装着方法を再度復習してくだ
      さい。
      
     それでも圧迫感がある場合は
      腰ベルトを下方に押し下げる補助器具はいかがでしょう?


Q6.なぜ妊婦だけが、独特なシートベルトの装着方法をするのですか?

   A.そもそもシートベルトというのは、やわらかい内臓部分を避け
     て、固い骨の上にベルトを通すことによって、事故の衝撃によ
     る内臓破裂を防ごう、というのが基本的コンセプトです。

     私たちが車に乗ってシートベルトを装着すると、特に意識しな
     くても、肩ベルトは肩甲骨-鎖骨-肋骨-胸骨といった胸の骨
     の上を斜めに自然と通るようにつくられています。
     腰ベルトも、左右の骨盤の骨のでっぱり(前上腸骨棘)から恥
     骨結合の前を通り、骨盤の骨を結ぶ形に自然に落ち着きす。

     妊婦の場合も基本的コンセプトに変わりはないのですが、お
     なかのふくらみのせいで、妊娠前のようにベルトを無意識に
     装着するだけで自動的にベルトが胸や骨盤の骨の上を通って
     くれることはなくなります。

     したがって、妊婦は意識して骨の上をベルトが通るよう気をく
     ばる必要があるわけです。
     しかもこうすることが、同時に妊娠子宮のふくらみの真上を
     シートベルトが横切るのを避ける事にもなり、一石二鳥となり
     ます。
 
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Q7.エアバッグがあれば、シートベルトは不要ではないのですか?

 A.妊婦のダミー人形を使った時速25マイルの正面衝突実験で
   、胎児ダミーの頭にかかる力とエアバッグの関係について調
   べた論文があります。
   正しくシートベルトを装着した場合と、シートベルト非装着の
   場合とを比較したところ、後者のエアバッグによる胎児ダミー
   の頭への衝撃は約27倍大きかったと報告されています。
                      (参考文献7)

   したがって、シートベルト無しでエアバッグが作動したら、赤
   ちゃんが危険にさらされる可能性があります。

   また、エアバッグは後方からの追突や、車の横回転、側面衝突
   の際には作動しませんので、やはりシートベルトは必要です。


Q8.シートベルトを装着すると、事故の際に子宮が圧迫されるのでは
   ないですか?


  A.子宮の膨らみを上下に避けるのが、
    妊婦独自のシートベルト装着法
    なのですから、正しく装着していれば、そもそもベルトの位置に
    子宮の大きな膨らみは来ないはずです。 (参考文献1)


Q9.シートベルトを装着すると、子宮破裂の危険は無いのでしょうか?

  A.子宮のふくらみを避ける妊婦独自のシートベルト装着法を、正
    しく行っていたにもかかわらず、子宮破裂を起こしたという報告
    は、世界中の医学文献を検索しえた限りでは、見出すことは
    できませんでした。 

    過去に報告された、シートベルトによる子宮破裂の報告は全て、
    ベルトが妊娠子宮のふくらみ自体を横断する形で装着していた
    ものとされています。(参考文献11)

          

Q10.仮に間違った装着方法をしていて子宮破裂をおこすと、その後
    どうなりますか?

  A.事故による子宮破裂は、お産に伴う子宮破裂と機序が異なり、
    赤ちゃんは100%死亡しますが、妊婦自身の死亡率は10%以下
    にすぎないとされています。

    また、お産に伴う子宮破裂と違い、手術による修復がそう困難
    ではない事が多いので、将来再び妊娠することは可能です。
                      (参考文献5)

    村尾医師も交通事故による子宮破裂を修復し、数年後に妊娠
    した患者さんを2名、経験しています。
      


Q11.間違った装着方法が子宮破裂の原因になりうるのでしたら、
     むしろシートベルトは装着しないほうがよいのでは?

  A.医学界には「シートベルト損傷」という概念があります。
    事故の際に、ベルトに触れる部分に強い力が加わるために、
    体が損傷を受けることです。
    肩ベルトの走行に一致した、鎖骨や肋骨の骨折が代表的です。
                      (参考文献10)

    腰ベルトが腰骨にきちんとかかっていない場合は、ベルトが直に
    柔らかい内臓にあたるため、内臓破裂を起こしたりします。

    しかしベルトを装着しなければ、もっとひどい怪我になりますの
    で、シートベルトをやめようという人はいませんよね。

    子宮破裂は、誤った装着方法によるシートベルト損傷の一つで
    す。
    しかし、ベルトを装着しないと車外放出や頭部打撲による妊婦
    死亡の危険が高くなります。
    (残念な事に車外放出・頭部打撲による妊婦・胎児の死亡は、
    今なお発生しています)

    妊婦さんが死亡すれば、お腹の赤ちゃんも死亡します。
    死んだ妊婦さんの子宮が無事でも何の意味もありません。
   
    したがって子宮破裂を避ける方法は、ベルトを装着しない事で
    はなくて、正しい妊婦独自の装着方法をとる事です。
       

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Q12.外国の報告ばかりをあげていますが、日本でのデータは無い
     のでしょうか?

A.残念ながら、まとまった人数での検討報告はなきに等しい状況
  です。特に妊婦の交通事故死のデータは皆無です。
  その理由は三つあります。

  1.交通事故の際の警察の現場検証の事故報告書には、怪我
   人が妊婦かどうかを記入する欄自体が存在しません。

   したがって、これを全国集計した
   「交通統計」(交通事故総合分析センターなど)にも妊婦の事
   故の項目はありません。

  2.日本の厚生労働省が作成する「人口動態統計」には、不慮
   の事故や自殺などによる妊婦の死亡(外因死)の項目自体が
   存在していません。

   したがって交通事故による妊婦の死亡数の統計も存在しな
   いのです。(同じ理由で1995年の阪神淡路大震災で死亡し
   た妊婦の数も、統計自体が存在しないのでわからないまま
   となっています)
      
  3.医学界側の事情として、妊婦の怪我は産婦人科・外科・救急
   科のはざまにある境界領域であり、関心を持つ医師自体もき
   わめて少ないということもあります。

   現時点では、村尾医師によ妊婦の交通事故の論文
   が、日本の医療界の最多数の報告となっています。
                   (参考文献8,9)


Q13.家の近所しかドライブしないので、シートベルトはしなくてもよい
     のではないですか?

 A.ほとんどの交通事故は自宅から40km以内で起きると言われ
   ています。したがってすぐ近所に行く時も、シートベルトは必
   要です。
                   (参考文献2)


Q14.自分は運転しないので、シートベルトはしなくてもよいのでは
     ないですか?

 A. 事故の際にかかる衝撃力は、運転者も同乗者も同じです。
   したがって運転免許を持っていない人や,タクシーに乗る人も、
   等しくシートベルトによって自分の安全を確保する必要があり
   ます。


Q15.後部座席に乗るので、シートベルトはしなくてもよいのでは
     ないですか?

   A. 後部座席にシートベルト無しで乗っていて事故にあうと、
     前部座席に座っている人に後ろから激突して、双方が大怪我
     をするとされています。
     このような二次被害を防ぐためにもシートベルトは必要です。
 
     また、後部座席でシートベルトを装着していて事故に
     あった場合、怪我の重症度は、前部座席でシートベルトを装
     着していた場合の約1/3まで減少します。 (参考文献12)
     

Q16.事故で車が火災をおこすかもしれないので、シートベルトはし
    ないほうがよいのではないですか?

   A.交通事故で車が火災を起こす可能性は、統計上1%以下とさ
     れています。
     また、シートベルトは事故の際も容易にはずせます。

     それよりも、シートベルトをせずに事故にあうと、重傷のため
     に車から自力で脱出できなかったり、あるいは意識を失って
     いる間に車が火災を起こすことがあります。
     こちらのほうが、よほど危険です。


Q17.乗車中の車の揺れが妊娠に悪影響を与えることはありません
    か?

   A.人類には太古から全世界で馬車の歴史があり、昔の人々
     は馬車により移動してきました。その中には当然妊婦も含ま
     れます。

     舗装された道路が無い上、地面の凹凸が直に伝わる、木や
     鉄の車輪の馬車の揺れは、現代の自動車よりも遥かに激し
     いものだったはずです。

     もし馬車の揺れが赤ちゃんに悪影響があるのであれば、数
     世紀前からの医学界の常識として、「馬車の揺れは妊娠に悪
     影響を与える」という認識が、広く普及していたはずです。

      しかしそのような事実が皆無であることを見ると、この件は
     数世紀にわたる人類の歴史の経験の積み重ねから、問題な
     いと判断できるのではないでしょうか。





Pregnancy Seat Belt Promote Association Japan
by  Kumiko Kato, Kazuo Shimizu, Hiroshi Murao