警察・法律関係 FAQ
To Police officers and lawyers




まず、「現在妊娠中の女性はこちら」と「妊婦のシートベルト装着法を
ご存知ですか
」の内容に予め目を通された上で、以下をお読みにな
る事をお勧めします。


Q1.「妊婦のシートベルトに関する法律は、どの条文ですか?


  A.道路交通法施行令第26条第3の2項
    <座席ベルトの装着義務の免除>
     「負傷、疾病もしくは傷害のためまたは妊娠中であることに
      より座席ベルトを装着することが療養上または健康保持上
      適当でない者が自動車を運転するとき」

    という条文です。


Q2.この法律の妥当性はどう考えればよいのでしょうか?

  A.1970年代までの運転席・助手席の座席ベルトは、腰ベルト1
    本の二点固定式ベルトしかありませんでした。

    二点固定式ベルトを装着していて事故にあうと、下記のように、
    母体の強度の屈曲により母体自身が妊娠子宮を押しつぶして
    子宮破裂を誘発する可能性がありました。
    

                       (参考文献 21) 

    しかし、この法律が施行されたのは1985年9月で、この頃には
    運転席・助手席に関しては肩ベルトつきの三点固定式ベルト
    が普及していたはずです。
    とすると何を根拠にこの法律を定めたのか不明です。
    
    ただ、後部座席に関しては、長い間、二点固定式が主流
    でしたが、平成6年からは、後部座席も三点固定式と定められ
    ました。

    全ての座席が三点固定式となり、子宮破裂のリスクが無くなっ
    た今、24年前に制定されたまま放置されてきたこの法律は、医
    学的にも異常な法律となってしまいました。


Q3.警察庁の考えはどうなっていますか?

  A.警察庁は、2008年11月、自動車の運転マナーなどを定めた
    「交通の方法に関する教則」(国家公安委員会告示)を改正し、
    妊娠中の女性もシートベルトを着用するよう求める事になりました。
   

Q4.この法律の運用はどうなっていますか?

  A.現在は上記「交通の方法に関する教則」が公表されたばかりです。
    従来と比較して、交通取締現場の警察官や、全国の自動車教習所で
    どのように変化したか、注意深く見守っているところです。


Q5.欧米先進国の法制度はどうなっていますか?

   A.村尾医師がOECD加盟30カ国の在日大使館に問い合わせた
     結果は以下の通りでした。

     
(1).妊婦も無条件にシートベルト装着: 21カ国

         ドイツ、フランス、オランダ、ルクセンブルグ、
         デンマーク、ノルウェー、フィンランド、
         アイスランド、スウェーデン、アイルランド、スイス
         チェコ、ハンガリー、ポルトガル、トルコ、カナダ、
         アメリカ合衆国、メキシコ、ニュージーランド、韓国、日本

     
(2).原則としてシートベルト装着だが、医師の診断書があれば免除: 4カ国

         イギリス、ベルギー、スロバキア、オーストラリア、

     
(3).妊婦は一律に免除: 5カ国

         イタリア、スペイン、ギリシャ、ポーランド、オーストリア


     ※注1.韓国、チェコ、メキシコ、トルコは、後部座席は一律に装着免除。

     ※注2.文書による一時回答23カ国、二次回答1カ国。残りは自己調査
                                            (参考文献27)

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Q6.欧米先進国の社会制度はどうなっていますか?

   A.日本と米国は正反対の指導をしてきました。

     <米国>
       道路交通安全局(NHTSA)、米国産婦人科医会(ACOG)、
       州政府などの公的団体が
       「お腹の赤ちゃんを守る一番の方法はシートベルトで母親
        を守る事です」というキャンペーンを盛んに行っています
        。                        (参考文献 1,15)

     <日本>
       従来は自動車学校の教官自体が、「妊娠中はシーシベルトを
       はずすように」と生徒に教え、第一線に勤務する警察官も
       同様の指導をしてきました。

       現在は前記「交通の方法に関する教則」が公表されたばかりです。
       従来と比較して、交通取締現場の警察官や、全国の自動車教習所で
       どのように変化するか、注意深く見守っているところです。

        
Q7.日本で妊婦独特のシートベルト装着法が普及しない背景は何
   ですか?


     A.法律により妊婦のシートベルト装着を免除している関係
       上、正しい妊婦のシートベルト装着法を国民に普及させる
       広報活動が全く行われてきませんでした。

       現在は前記「交通の方法に関する教則」が公表されたばかりです。
       従来と比較して、交通取締現場の警察官や、全国の自動車教習所で
       どのように変化するか、注意深く見守っているところです。
       

Q8.警察は「ベルト装着の可否は医学的判断に従うように」とのこと
    ですが、日本の産婦人科医師の意見はどうですか?

     A.そもそも交通外傷の専門的医学知識に詳しい産婦人科医師は
       、めったにいないのが実情です。

       そのためか産婦人科医師自体の中に、医学的に正しくない事
       を患者さんに教える人がいて、一般の人々の知識の混乱に
       輪をかけているのが日本の今の状態です。


Q9.今後、法律をどうすればよいと思われますか?

     A.シートベルト装着不要と考えられる場合とは、例えば

        1.三つ子、四つ子といった多胎妊娠で、お腹が大きすぎて椅
         子に座ること自体が困難な妊婦
           ⇒異常妊娠ですから「疾病」と解釈できます

         2.妊娠中の大量出血等の緊急事態で、シートベルトどころで
          はない妊婦
           ⇒異常妊娠ですから「疾病」と解釈できますし、
             普通は救急車を利用しますよね
  
        3.陣痛が始まったのに病院に行くタイミングが遅れて、今に
         も赤ちゃんが生まれそうで、寝た状態から身動きできない
         妊婦
           ⇒普通は救急車を利用しますよね

        などが考えられます。

        したがって、前述の道路交通法施行令の
        「負傷、疾病もしくは傷害のためまたは妊娠中であることによ
         り座席ベルトを装着することが療養上または健康保持上適
         当でない者が自動車を運転するとき」
        の中の「または妊娠中であることにより」の語句を削除しても
       、何ら困ることはありません。

    
Q10.法律を改訂する事は、どういう社会的意義がありますか?

      A.妊婦のシートベルト装着は単なる交通安全運動ではありません。
        国家の総妊産婦死亡数を削減することに大きく貢献します。
                (医師の皆様はこちらを参照)

        交通事故による胎児死亡の頻度は、母体負傷者数の10%程度と
        されています。日本の妊婦の、自動車乗車中の交通事故負傷者の
        数は、年間推定7817人(平成19年交通事故統計より推定)ですから、
        その10%とすると、
毎年800人の胎児が、交通事故による犠牲
        となっている
事になります。

        少子化が国家的大問題となっているおり、法律を改正すれば、
        
これら800人の胎児の命と、悲しみの涙を流した同数の母親達を
        助けることになるはずです。




Pregnancy Seat Belt Promote Association Japan

by  Kumiko Kato, Kazuo Shimizu, Hiroshi Murao